いつまでも仲良く│西山繭子の「女子力って何ですか?」

西山繭子の「女子力って何ですか?」

Writer

西山繭子

#240

いつまでも仲良く

2024-04-08 12:59:00

 「なんかー、超激おも映画だったね。想像してたのと違ったあ」「ねえー、激おもー」これは『オッペンハイマー』鑑賞後にトイレで耳にした若い女の子たちの会話です。彼女たちがどんな想像をしていたのか、とても気になりましたが、何はともあれ、こういった作品に興味をもつことは良いことだと思います。被爆国である日本では、公開前から物議を醸していたこの映画ですが、私個人の感想としては決して原爆を賞賛するような内容ではないと思いました。原爆という悪魔の兵器を前にしても、人間は己の欲望を抑えることができない。遠い国で奪われる何十万の命よりも、目の前の地位や権力をいかに掴むかしか考えられない。そんな人間の愚かさが、心底恐ろしいと感じる映画でした。あまりにも恐ろしすぎたので、翌日は童心に返ろうと『ゴーストバスターズ フローズン・サマー』を観ました。ビル・マーレイとダン・エンクロイドがNYの街に立ち、そこにあの主題歌が流れれば、もう感泣です。小学生の頃、母に買ってもらったファミコン『ゴーストバスターズ』。後になって「クソゲー」と呼ばれたこのゲームは、何をどうしたらクリアなのかさっぱりわからず楽しさ皆無。唯一の魅力といえばスタートボタンを押した瞬間に発せられる「ゴーストバスターズ!」という声だけでした。それでも、せっかく買ってもらったので母には「すごく楽しい」と言っていました。4月に入って映画の日、TOHOシネマイレージデイと続き、翌日は水曜日だったので『ラブリセット 30日後、離婚します』を鑑賞。こちらは韓国のラブコメ。めちゃめちゃ面白かったです。まわりは見事に女性客しかいませんでしたが、男の人ってラブコメ見ないのですかね?すごく幸せな気分になるのに。ちなみに私があまり見ないジャンルはファンタジー、SF、ヒーロー系アクションです。化け物と化け物の戦いのどこに感情移入をして良いのかわからないんですよね。『ゴジラ×コング 新たなる帝国』の予告を見ても「あのー、すみませんが、地球じゃなくて、ちょっとよそでやってもらえます?」みたいな気持ちになってしまうのです。見たらきっと楽しいのでしょうけど、今は見たいものが他にもたくさんあるので、そちらを優先。そして木曜日はTCGメンバーズカードを利用して『ラインゴールド』を鑑賞。ファティ・アキン監督、やはり天才。どこまでもかっこ良い映画でありました。と、ここまで4日間連続で映画館に足を運んでおりますが、それはたまたま割引価格で見られる日が続いたためであります。現在の映画代は2000円。この20年で200円しか値上がりしていないことを考えたら良心的ですが、それでも私は定価ではめったに見ることはないですね。特に今月は、いつも以上に節約を心がけなくてはいけないと思っているので。先月、函館と名古屋に旅をしたことはこのコラムでも書きましたが、月末はさらに父の生まれ故郷である山口県の防府市にも行ってきたのです。
 これまで防府を訪れたのは、本当に数えるほど。初めて行ったのは高校生の時でした。初対面の祖父母を前に、姉と二人で少し緊張したことを憶えています。それでも、みんなで秋吉台に行ったり、健康ランドに行ったりと、普通の祖父母と孫といった時間を過ごしました。父の子どもの時の写真を見せてもらった時、姉が「小学生の頃の繭子と同じ顔じゃん」と笑っていましたが、その姉は、子どもの頃の叔母とまったく同じ顔をしていました。血とは恐ろしいものですね。大人になって、姉と甥っ子1号、2号を連れて遊びに行ったこともありました。その時の動画を見ると、父が当時1歳だった2号を嬉々として高い高いしており、それなりに祖父というものを楽しんでいたのかなあと思います。その父は今、防府の高台にあるお墓に眠っています。今はまだ、手を合わせてもうまく言葉が浮かびません。西山家の墓誌を前に、家族というものについて考えます。前の晩、叔母からこれまで聞いたことのなかった家族の話をたくさん教えてもらいました。韓国から渡ってきた祖父母がいて、父がいる。そして母と出逢って、私たちがいる。それからもずっとずっと色んなことがあって、たくさんの人が苦しんで悲しんで、それを乗り越えて、今というものがあります。私が生まれた時、父が私に宛てた手紙にはこう書いてあしました。「お父さんは早くに弟をなくして、とても悲しい思いをしました。繭子は、ずっとお姉ちゃんと仲良くして欲しいです」お父さん、その願いはじゅうぶん過ぎるほど守られているから安心してくださいね。写真は、助手席にいる姉が「喪服で運転してると、繭ちゃん、普通にイナカにいるおばさんだわ!うけるー!写真撮っておこう」とパチリ。どこまでも仲良しの私たちであります。

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2024.4.8 配信

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西山繭子さんINFORMATION

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website