我慢がきかない│西山繭子の「女子力って何ですか?」

西山繭子の「女子力って何ですか?」

Writer

西山繭子

#182

我慢がきかない

2021-11-08 10:26:00

 元ロッテ監督のボビー・バレンタイン氏がコネティカット州スタンフォードの市長選に落選したというニュースに驚きを隠せない西山です。トランプが大統領になれるのに、ボビーが市長になれないなんて。2005年、ロッテを日本一に導いたボビー。メッツの監督時代、退場後にもろバレの変装でベンチに戻ってきたボビー。そのボビーが落選だなんて。ああ、これが千葉市長選だったらひょっとしてと思ってしまいます。そのボビーは71歳。私の父と同じ歳であります。これはあくまでも一般論ですが、歳をとると我慢がきかなくなると言います。ただ、私の父の場合は我慢がきかないなんて言葉では到底あらわせない人間なので比較対象にはなりません。一方、自分の母親などを見ていると、私といる時はいつも楽しそうで、その昔、二子玉川の花火大会からへそ出しビスチェで帰宅した私を玄関先で鬼ビンタした時に比べると、むしろ穏やかになっているように思います。でも確かに、色んなところで怒りを爆発させている大人の話はよく耳にします。そして今、私は、自分がそうなりつつあるのではという不安に苛まれているのです。
 少し前、愛用していた携帯電話を買い換えました。私はいまだにガラケーを使っています。iPhoneも持っているのですが(ちなみに5S)、どこの通信会社とも契約をしておらずwifi環境下のみで使用するというスタイル。不便なこともありますが、心地良いことの方が多いのでもうしばらくはこのままで。そのガラケーのバッテリーがだいぶ劣化してきたので、買い換えることにしたのですが、今はどんなガラケーが売っているのだろうとドコモのサイトを調べたところ、何と今年の6月にDIGNOというまさに私が欲していた商品が発売されていたのです。カメラ、ワンセグ、おサイフケータイなどの機能は一切なし!通話できればいいじゃない!という潔い機種なのであります。アダモだか何だかを大々的に宣伝するのも良いけれど、ドコモさんにはもっと色んなユーザーを大切にして欲しいなあ。すぐに喜び勇んで購入を決めたわけですが、ここからが苦難の道。まずこのコロナ禍ということもあってドコモはオンラインでの手続きを推奨しています。店舗で手続きをする場合は有料になりますが、無限とも思えるプランや、ややこしい専門用語などのことを考えると、高齢者は店舗に足を運ばざるを得ないのが現状でしょう。私は購入前にチャットでオペレーターに相談したところ「ご心配されているデータ移行ですが、お客様ご自身で比較的簡単に行えると思います」とのこと。加えて店舗に行く時間もなかったためにオンラインで申し込みをしました。すぐに届いたDIGNOはシンプルでとても使いやすそう。しかし同封されていたmicroSDをセットして電源を入れてみたものの、次に何をして良いのかさっぱりわからない。ドコモのページで検索してもさっぱりわからない。そういう時は人に訊くべしとお客様サポートに電話をすることにしました。しかしホームページの情報量が多いので、電話番号にいきつくまでに時間がかかります。その間、先方は「お問合せのその前に」「メールで問い合わせ」「チャットサービス」「おたすけロボット」と、とにかく「電話してくんじゃねえ」と言わんばかりに電話での問い合わせを回避したい模様。まあ、それでもピッポッパッとするのが中高年や高齢者なのです。しばらく待たされてやっと繋がったオペレーターの方に現状をお伝えしたところ、いきなり専門用語を使って切り替えされました。「オッペケペーがテケテケドゥンな状態ということでしょうか?」「・・・申し訳ないです。不慣れなもので、私にもわかるように話していただけますか?」最初は穏やかに話していたのですが、それでも止まらない専門用語に対して「それってどういうことですか?」と何度も訊くうちにイライラが募ってきました。そしてついに「店舗にありますドコピーという機器でしたら簡単にデータ移行が」という言葉にカチン。かつて世田谷のマザーテレサと呼ばれた私も怒り心頭。「あのね!チャットで簡単って言われたからオンラインで買ったの!だって、おたくの会社、店舗に一歩でも入ったら金とんでしょ?」「いえ、そんなことは・・・」「じゃあ、そのデータ移行は無料なわけ?」「機械の利用自体は無料なのですが、サポートを受けられる場合は有料で・・・」「ほら!金とんじゃない!」もう完全にクレーマーです。この場を借りて対応してくださったオペレーターの方に謝罪します。この日はドコモで大規模な通信障害が起きた翌日だったので、きっと朝から苦情の対応に追われていたことでしょう。その上、ガラケークレーマーおばさん参上。若い頃は機種変更で手間取ることもなかったし、こんな風に感情的になって声を荒げることもありませんでした。ああ、ひたすら反省です。結局、データ移行は手打ちという原始的な方法をとったのですが、途中で面倒くさくなり30件ほどしか登録していません。しかしこの一ヵ月、それでじゅうぶんだということもわかりました。それはそれですっきりして良かったように思います。ドコモ継続利用期間、25年と7ヶ月。これからもお世話になります。

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2021.11.8 配信

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西山繭子さんINFORMATION

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website