自宅療養│西山繭子の「女子力って何ですか?」

西山繭子の「女子力って何ですか?」

Writer

西山繭子

#176

自宅療養

2021-08-09 16:57:00

 ああ!やっと、やっと、やっと!オリンピックが終わりました!今、この原稿を書いている傍らのテレビでは、閉会式の真っ最中であります。この2週間、朝から晩まで続くオリンピック中継とニュースにうんざりし、テレビをつけている時はひたすらHDDに録り溜めていた番組を観ていた私。『世界ふれあい街歩き』『COOL JAPAN』『地球ドラマチック』『BS世界のドキュメンタリー』『ドキュランドへようこそ』気づけば、何が何でも受信料の元を取りたいという気概を感じるラインナップですが、このあたりに良質な番組が多いのは事実です。そしてこれにさらにBSプレミアムで放送していた映画が加わります。『市民ケーン』『間違えられた男』『ダイヤルMを廻せ』オリンピック期間中、これまで観ていなかった名作をたくさん観ることができました。いやしかし、まさか朝の6時に朝ごはんを食べながら映画『ボディガード』を観ることになるとは。朝6時からの「エン、ダーーーーーー!」です。1992年、クラスメイトと新宿コマ東宝でこの映画を観た14歳の私は、30年後にこんな世界が待っているなんて想像もしませんでした。主題歌「エン、ダーーーーーー!」のシングルCDを友人に貸したところ、CDパッケージの下側の格子になったプラスチック部分を勝手に折られて、本気で絶交を考えた14歳の少女は、30年後に自分の国と絶交したくなるなんて思いもしませんでした。いやでもね、本当だったら私もオリンピックを心の底から楽しみたかったですよ。闘うアスリートたちの美しい姿に、胸を震わせ、一緒に感動の涙を流したかったです。それが素直にできなかったのは、やはり奴らのせい。あまりにも無責任な奴らのせい。緊急事態宣言に慣れてしまった私たちにも責任の一端はあるけれど、何よりもアホみたいな対策しかできずに、この感染爆発を引き起こしておきながら、なおも引き続き「お願い」しかしない奴らのせい。この一年間で外国の友人たちに何度『Our government doesn’t work』という言葉を送ったことか。私がまだ1回目のワクチン接種すら終わっていないというのに、24歳のスイス人は『I’m fully vaccinated』とな。ちなみに彼はローザンヌ大学に通っているので「街でバッハを見かけたら蹴り飛ばして欲しい」と言ったところ「そうしたいけど、たぶん僕はバッハに気づかない」ということでした。残念。しかしこの感染爆発、コロナに対して悠長に構えていた私もさすがに怖くなってきました。だって今コロナになったら自宅療養をしなくてはいけないのですから。きっと偉い人は軽症でも入院できるのでしょうが、庶民の私は自宅療養まっしぐら。まったく何のために社会保険料を払っているのかしらと怒り心頭なのですが、それでも自宅療養まっしぐら。自分の命は自分で守れとまるで戦時下に生きている気分でありますが、お国のために死ぬ気はさらさらないので、さっそく一人暮らしの自宅療養には何が必要かをチェック。ふむふむ。だいたい想像通りではありますが、家にストックを置かない主義なのでまずは衛生用品を買い足しておいた方が良さそうです。そして食べ物。私の世代では、非常食と言われてまず思いつくのはカンパンですが、高熱でうなされている時に、口の中の全ての水分を持っていくあのカンパンは間違いなく事態を悪化させるでしょう。ついでに言うと、高校生の時、支給されていた非常時用のカンパンを授業前にぼりぼり食べていたところ、担任の先生に「西山!何かあったらお前だけ腹をすかして死ぬんだぞ!」と激怒されたことがあり、カンパンは色々と因縁深いので食べたくありません。まあ今では美味しい保存食がたくさんありますからね、そこは何とかなるでしょう。しかし用意周到にしていたとしても容体の急変には自力で対処できないのが一番恐ろしいところ。43歳にして家で孤独死はツラい。遺品整理であんなものやこんなものを発見されるのもツラい。「じゃあこれは私が」「いやいや、私が」と遺したバーキンを取り合う母と姉を草葉の陰から見るのもツラい。そんな思いをしないためにも、やはりここは何が何でも生き延びなくてはいけません。2回目のワクチン接種が終わるまでの約1ヵ月、感染対策にますます力を入れる所存であります。写真は、原稿を書いている間に自宅に届いた伊藤園からのプレゼントです。春に応募したキャンペーンに見事当選いたしました。伊藤園さん、ありがとう。これは自宅療養の強い味方になりそうです。

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2021.8.9 配信

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西山繭子さんINFORMATION

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website