移住を考える│西山繭子の「女子力って何ですか?」

西山繭子の「女子力って何ですか?」

Writer

西山繭子

#150

移住を考える

2020-07-13 13:55:00

今、この原稿を美容院で書いています。1ヵ月半ぶりの来院という、私としては女子力の極みというほどのハイペース。今は2人の可愛い女性スタッフがせっせとカラーリングをしてくれています。これで白髪が目立たなくなるぞ。やっほー。少し前までは外出自粛のため「24時間全てが私もモノ!」という夢のような生活を送っていましたが、ここ最近は少しだけ忙しい。週4日勤務の契約社員生活では当然週3日の休日があるわけですが、今月は撮影がちらほらと入っているために普通に計算すると週7日では足りない事態に陥っています。貴重な有給休暇は父の入院時に使い切り、今はゼロ。よって〆切を死守するために僅かな時間も無駄にできないというわけです。そんなせわしい日々の中、気づけば東京都の新規感染者が200人を越え、第2波ともいえる非常事態が押し寄せています。それなのに「ゴートゥートラベルキャンペーン」なるものが始まろうとしていて、もう正気の沙汰じゃないだろこれ、と政策に疎い私でさえ心配になります。東京都としての対応もどうなのよと感じることが多く、この街のドンをさらに4年、小池百合子さんが務めることに不安は募るばかりです。しかしコロナ禍での選挙戦、街に並んだ選挙ポスターを見ているとお笑いチキチキレースをやっているのだろうかと錯覚するほどで、そろそろ東京で暮らし続けるかを真剣に考えなくてはいけないなと思いました。私は生まれも育ちも東京なので、東京に対しての思い入れがまったくありません。地方から出てきた若者の「都会で一旗あげるぞ!」や「中目黒!恵比寿!代官山!おっしゃれー!」といったことがありません。いまだに恵比寿ガーデンプレイスが最新スポットだと思っていたり、代官山の蔦屋書店に入ったことがなかったり、ミッドタウンのことを旧防衛庁と言ってしまったりと、東京人とは思えぬことばかり。もちろん東京は便利だし、少ないとはいえ友だちもいるし、世界で一番美味しいものが集まっているしで、魅力的だとは思います。それでも生活の基盤さえできれば、ここではないどこかで暮らしてみたいなあという願望がここ最近はちらほら。
これまでたくさんの場所を訪れてその魅力にふれ、暮らしてみたいなと思った場所は数知れず。日本国内では、断トツで香川県です。映画の撮影で訪れたのですが、休日は当然のごとくうどん屋めぐりに興じていました。安価でこれほど美味しいものをさくっと食べられるというのは良いなあ、蛇口をひねるとだしが出るタンクが家にもあったらなあと毎日考えました。滞在は高松市の中心部だったのですが、高松駅前で借りられるレンタサイクルが激安でとっても便利でした。それ以外にも金刀比羅宮や国営讃岐まんのう公園に行ったのですが、夏の風に揺られる緑がとても美しかったという印象があります。雪がほとんど降らないというのもポイントが高いですね。言っても私はシティガールなので、ド田舎で自給自足の生活をしながら人間とは、自然とは、なんて語る気持ちは毛頭なく、そこそこ都会でまあまあ便利な場所で暮らしたい。そう考えると、東京近隣の県が一番現実的かなと思います。数年前に訪れた千葉県の内房はとても魅力的でした。東京駅から房総なのはな号というバスで1時間半ほど走るとハイウェイオアシス富楽里という道の駅に着きます。「世のおばさんは皆道の駅が好き」というのはもう常識でありますが、そのおばさんたちが大興奮すること間違いなしの最強の道の駅。地元でとれた新鮮な食材がたくさん並んでおり、これで旦那様に毎日美味しいごはんを作ってあげたいなあと思いました。旦那、いないけど。また内房はキャッシュで買える格安物件が多いところも夢が広がります。茨城県つくば市や静岡県熱海市も住んでみたいと思ったのですが、物件情報を覗いてみると、まあ普通に高いです。そしてハードルは上がりますが、外国にも移住したい土地はたくさんあります。初めて暮らしてみたいなと思った街は、スペインのマジョルカ島でした。言わずと知れた地中海のリゾート地でありますが、ビーチから少し離れれば落ち着いた街並みがあったりして、穏やかなんですよね。ここ最近ではアムステルダムが私の心を鷲掴みにしました。魅力はたくさんありますが、私が何よりも素敵だと思ったのは窓の大きさ。私はあの街を、窓の街だと思いました。あれほど大きな窓の家に暮らせるならば、たいして好きじゃない人とでも生活できるような気がします。あとは意外なところでタイ北部のチェンマイ。涼しいし、パンダがすごく近くで見られます。ああ、いつか東京を離れて穏やかな暮らしができる日が来るのかなあ。そのためにも今はあくせく働かなくてはいけません。

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2020.7.13 配信

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西山繭子さんINFORMATION

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website