秋ですね│西山繭子の「女子力って何ですか?」

西山繭子の「女子力って何ですか?」

Writer

西山繭子

#108

秋ですね

2018-10-08 14:09:00

 秋です。台風が立て続けに日本列島をおそっています。被害に遭われた方々には心よりお見舞い申し上げます。9月末の台風24号では、午後8時にJR線が計画運休をするということで私も仕事が終わってから早々に帰路に着きました。私が週5で働いている職場は少々特殊でありまして、土日が一番忙しいのです。8時半までには出社をして、昼休憩もほとんど取れずに19時過ぎまで働きっぱなしであります。なので日曜日の仕事を終えた後は、もう出がらしみたいな感じです。顔もシワッシワのヨレッヨレで、見た目が45歳ぐらいになります。それほどまでヨボヨボになってしまうので、帰宅後に家でご飯を作るというのが非常に辛く、そのまま寝てしまうことも多いです。しかしこの日は台風の影響なのか、何だかテンションが上がってしまい「ビールが飲みたい」と思いました。普段、家では一切飲まないので、とても珍しいことでした。そしてビールを美味しく飲むためには、何を食べれば良いかと考えた私は、電車に乗る前に近所にあるドミノピザに電話を入れました。我ながら、本当に終わってるなと思いました。自堕落な新入社員男子みたいな生活。女子力の欠片もない。スーパーでプレミアムモルツ500mlを1缶買い、ピザをピックアップして帰宅する40歳の独身女。字面にすると、ますます悲しい。こんな生活がいつまで続くんだろうと溜息をつく一方、永遠に続けと思っている自分もいます。だって自由で最高だもん。ピザにビールといえば、もちろんそこには映画よね!ということで、録画していた『マイ・インターン』を観ることにしました。これを観るのはすでに3回目。それでも面白いのは、やはり安定のロバート・デ・ニーロの力によるものでありましょう。デ・ニーロ出演のコメディって絶対にはずさないんだよなあ。もう3回目となりますと、展開はもちろん頭に入っているので、今回は私も仲間に入れてもらうことにしました。意味がわからない方のために説明しますと、仲間に入れてもらうというのは、デ・ニーロやアン・ハザウェイの台詞に勝手に口を挟むというものです。「No way!!」とか「Are you sure?」といった簡単な英語なのですが、その後の役者の反応がしっくりくると一体感が生まれ、デ・ニーロとの距離がぐっと縮まります。台風の夜に家で一人でそんなことに興じている40歳女性は、日本広しといえど私ぐらいのものでしょう。そろそろ病院に行った方が良いかもしれませんね。

 翌日は台風一過の夏日となりました。休日ということもあって、衣替えに勤しみました。40歳を迎えて気づいたのですが、この年齢になると「似合わない服」というのがたくさん出てきます。朝、出勤前にこれを着ようかなと袖を通して鏡を見ると何だかしっくりこない。うーん、疲れて顔色が悪いのだろうか?今日はやめておこう。しかし、それが何度も何度も続いたら、それはもう似合わなくなったことを認めなくてはいけません。少し前に姉が電話で「ポロシャツを着ると、体操着みたいになっちゃうんだけど、何と合わせたら良いんだろう?」と言っていたので「もうそれは諦めるしかない。どんなに襟を立てようと、おばさんのポロシャツは体操着になっちゃうから」と教えてあげました。ポロシャツが体操着になってしまう件に関しては、私は30代前半には気づいていたので早々にクローゼットから姿を消しました。今回の衣替えでは、膝上のスカートやワンピースもほとんど処分。ノースリーブや胸元が開いた服もほとんど処分。ジル・サンダーだろうが、モスキーノだろうが、着ないものは着ない。スパッとさようなら。クローゼットの中がますます寂しくなりました。ここまでくると断捨離と言うより、もはや終活みたいな感じです。しかしそれでもやっぱりこれだけは、捨てられないというものがあります。この写真の2枚です。衣替えのたびに袖を通して鏡の前に立ってしまう40歳。「あ、けっこうイケるかも」とか思ってしまう40歳。ああ、こんな私が幸せになれる日はやってくるのでしょうか。

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西山繭子さんINFORMATION

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website