美人妻│西山繭子の「女子力って何ですか?」

西山繭子の「女子力って何ですか?」

Writer

西山繭子

#102

美人妻

2018-07-07 14:58:00

 「西山さん、おはようございます。暑いですねえ」「おはようございます。ホント。梅雨とは思えないですよね」「え?もう梅雨、明けましたよ」「え!本当ですか!?じゃあ、明けましておめでとうございます!」「あ、あ、はい…」職場でパートのおばさんにこんなことを言って困惑させている西山です。会話はキャッチボールと言いますが、私の場合は投げっぱなしが多いです。女子力の高い人は、上手にキャッチしたあげく取りやすい球を投げ返してあげるのでしょうね。しかし私はその球にすら、わざと当たりに行ってネイマール級に痛がったあげく「どこに投げてんだよ!」という当たり屋気質も兼ね備えています。もう救いようがない。アーメン。女子力の高い人といえば、ここ最近ではやはりW杯戦士の妻たちでありましょう。メディアもこぞって彼らの美人妻たちを取り上げていました。いいな、いいな、私もサッカー選手の美人妻になりたかったな(美人前提)。日本中から応援されている旦那のユニフォームを着て「おつかれさま!I’m proud of you」とか突然の英文でインスタアップとかしたいもん。W杯期間中以外も「今日の夕ご飯。夏バテでちょっと手抜き(笑)」とフルコース級に手の込んだ料理の写真をわざわざ2人分並べて(ランチョンマット必須)アップしたいもん。どこで何を間違えたのだろう。もうここのコラムでは何でも書いちゃいますけど、私もその昔サッカー選手とお付き合いしていたことがありました。つまり美人妻になれる可能性もあったということ。しかし現実は、つい先ほども、よく行く薬局に電話をして「あのー、今日ってポイント3倍デーの日ですか?」と問い合わせるという美人妻からはかけ離れた生活。ああ、どうしてこうなった!今回はW杯記念企画として、私がなぜ美人妻になれなかったのかを検証してみようと思います。テレビがまだブラウン管の時代だった20年も前の話なので、記憶もぼんやりと薄らいではおりますが…。

 サッカー選手との恋バナをすると、決まって訊かれるのが「どこで知り合ったの?」ということ。どこで?もちろん『共通の友人を介した食事会』という名の合コンです。私のような「そこそこ綺麗or可愛い、けど売れてない芸能人」の女性は、かなりの高確率でサッカー選手と合コンしたことがあるはず。華やかにJリーグが開幕してから25年、最初はヴェルディの選手とモデルたちが作ったであろうその流れが今では完全に定着。強豪校のラグビー部員が大学卒業後に、大手広告代理店やテレビ局に就職する流れと同じ感じですね。この先もなくなることはないであろう流れってやつ。3年ほどの交際期間中、ほとんど毎日一緒にいて、オフ期間には海外旅行に行ったり、お互いの両親とも仲良しだったり、順調にいけば美人妻になれる可能性があったのですがここはやはり西山繭子、数々の蛮行にイエローカードが1万枚たまり、ピッチから去ることになりました。将来、サッカー選手の美人妻になりたいという人のためにいくつかアドバイスをしますね。まず1つ目。『彼の試合中にビールを飲むな』その日は天気がすこぶる良く、完璧なるビール日和でした。ピッチには試合に向けて集中しながらアップをする彼の姿。私は、ああ、やっぱりかっこいいなあと思いながらビールを片手に彼を眺めていました。その時、まったく気がついていなかったのですが、その私の姿がオーロラビジョンに映し出されていたそうです。するとチームメイトが「ビール飲んでるの、あれ、お前の彼女だろ」とビジョンを指差しました。彼は恥ずかしくて死にたくなったそうです。美人妻は彼が頑張っている時にビールを飲んではいけません。2つ目は『彼の試合で野次るな』サッカー選手の一番怖いもの、それは何といっても怪我であります。とある試合で彼が相手選手の危険なファウルによってピッチに倒れこんでしまいました。苦悶の表情を浮かべる彼。私は立ち上がり「おい!何してんだよ!」と相手選手に罵声を浴びせてから「審判、どこ見てんだよ!」と鬼の形相。試合後、心配する私に彼は開口一番「あのさ、野次とか本当にやめて。××さんに『お前の彼女がブチきれてたぞ、愛されてんな』って言われたから」とカンカン。××さんは怪我でベンチに入っていなかった先輩選手で、どうやら私の席の近くにいたらしい。美人妻は何があっても野次ってはいけません。3つ目は『totoで彼のチームに負け予想をつけるな』スポーツ振興くじtotoを毎週一口だけ購入していたのですが、あと一つで3等当せんという時がありました。「ううー、悔しいー」とソファでじたばたする私。彼はテーブルの上にあったくじをひょいと手にとると、黙って私を睨みつけました。あ、やばい。「だ、だ、だって今のアントラーズに勝つのはちょっと難しいかなーと思って…」何のフォローにもなりませんでした。美人妻はどんな時でも勝利を信じなくてはいけません。こうして3つ並べただけでも私が美人妻になれなかった理由がわかりますね。美人妻の座を狙っているみなさん、ぜひ参考にしてくださいね!写真はポイント3倍デーかをわざわざ電話で問い合わせてまで買ったシロモノです。

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西山繭子さんINFORMATION

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website