フラーム│西山繭子の「女子力って何ですか?」

西山繭子の「女子力って何ですか?」

Writer

西山繭子

#097

フラーム

2018-04-16 18:54:00

 今この原稿を私は所属事務所のフラームで書いております。外に出ているスタッフをのぞき、総勢8名が所属女優の仕事の件で、電話をしたりメールをしたり慌ただしく仕事しています。「広末のスケジュールが」「有村の広告の件で」「吉瀬の入り時間が」「戸田の現場に」うんうん。みんな、頑張ってるね。さっきから西山の「に」の字も出てこないけどね。てか、事務所の片隅に馴染みすぎて、みんな女優がここいること忘れてるっぽい。まあその女優も、さっきからパソコンを前に難しい顔して何かを考えているふりをしつつ、事務所がいただいた手土産のお菓子を食べ続けているんだけどね。これらを持ってきてくださった方は、もしかしたら「有村架純ちゃんが食べてくれたらいいな」とか「吉瀬美智子さんに食べて欲しいな」とか思っていたのかもしれませんね。うんうん、わかりますよ、その気持ち。でもね、残念!(波田陽区)ぜーんぶ、西山繭子の胃袋に入ってますから!フラームきってのプロ意識のなさ、お菓子大好き斬り!ジャーン。(ギター音)

このフラームに所属してもう20年。うわー。第1回目のこのコラムでは所属して15年って書いてあったから、このコラムも5年目か。そっちもうわーだな。コラム、あと少しで100回だもんね。100回記念には、秋葉原の雑居ビルの地下でオフ会を予定しています。それにしても20年といえば、人生のちょうど半分ですよ。今では、もうフラームに骨を埋めるつもりでいますが、ここまでには色んなことがありました。もともと私はデビュー時には別の事務所にお世話になっていました。デビューしてすぐに3本もメインでCMをやらせていただきありがたい限りでしたが、グラビアやバラエティといった仕事が多く、私がやりたいお芝居の世界とは離れていく一方でした。スカウトされて深く考えずに飛び込んでしまったこともあり、芸能事務所について全然知らなかったんですよね。その時は大学生でもあったので、まあすぐに仕事ができなくてもいいやと事務所に辞めたい旨を話しました。そして前所属事務所での最後の仕事の日がやってきました。浴衣と水着という漫画雑誌のグラビア撮影。ちなみにグラビアに疑問を感じていたのは水着撮影がイヤだという理由ではなく、私が水着になったところで誰が嬉しいんだ?と思っていたからです。なので嬉しい人がいてオファーさえあれば、今でもやりまっせ!話は戻してそのグラビア撮影の時のことです。編集者の方が私に「西山さん、2週間前にフランスのリヨンにいた?」と訊いてきました。「はい、いました」「やっぱり!」あれまあ、ものすごい偶然。お互いにびっくりなのでありました。2週間前、フランスのリヨンで日本が初出場したW杯のジャマイカ戦を見終えた私は、一人でカフェにいました。編集者さんもそこに仕事仲間といたらしいのです。「可愛い子がいるなって思ってさ、スカウトして広末涼子ちゃんのいる事務所に紹介しようかなって考えてたんだけど、トイレから戻ったらいなくなってたんだよね。でも、やっぱりこういう仕事してたんだね」そう言われた私は、自分の状況を話し「ぜひ紹介して下さい!」と相成りました。そこから20年。キャッチフレーズは『鳴かず飛ばずの西山繭子』、しかしそんな私に今でも「何か面白いことができるように一緒に頑張ろう」と言い続けてくれる社長には本当に感謝なのであります。毎年お誕生日には素敵なプレゼントをくれたり、ほぼドリフのコントみたいなバレエのコンクールの応援にかけつけてくれたり、私がお世話になった編集者さんのお葬式に一緒に参列してくれたり、もうお父さんのような存在であります。そんなお父さんは、先日もハウススタジオで撮影しているところに顔を出してくれました。まあ、それは私のためではなく同じ事務所の松本穂香ちゃんがいたからだと思いますが。休憩時間、プロ意識の高い穂香ちゃんは高カロリーなロケ弁ではなく、サラダを食べていました。その横で私はロケ弁を完食した上にエクレアを食べていました。撮影の合間に穂花ちゃんに「西山さん、フラームに入ったばかりの頃って恋愛禁止とかありました?」と訊かれ、え?フラームに恋愛禁止とかあるの?初耳なんだけど。と驚きましたが、そこはトンチをきかせて「私は39歳まで恋愛禁止だったのね。だから独身なの。で、今年40歳になったからやっと恋愛できるんだー」と言うと、穂香ちゃんはこの先輩、大丈夫かみたいな目で私を見ていました。写真は毎年作っているフラームのポストカードです。一人の普通のおばちゃんを除いて美人揃いであります。ただ、女子力という観点で見るとみんなあまり高くないと思いますよ。女優なんて、そんなもんですから!残念!(波田陽区)

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西山繭子さんINFORMATION

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website