家の条件│西山繭子の「女子力って何ですか?」

西山繭子の「女子力って何ですか?」

Writer

西山繭子

#096

家の条件

2018-04-09 17:03:00

 最近、原稿の合間にネットで物件をチェックしています。いや、物件のチェックの合間に原稿を書いていると言った方が正しいか。今住んでいる家は、初めての一人暮らしを始めた記念すべき住処です。ここに決めるまで15軒ぐらい回ったかなあ。その時は友人であるイケメン俳優くんがアルバイトしている不動産屋さんに頼んだので、その彼と一緒に内見していました。イケメンにはあまり縁がない私が、毎週のようにイケメンと物件を見に行って「コンロが一口なのがなあ」「そんなこと言って、繭子さん料理しないでしょ?」「一人暮らし始めたらするもーん」とか「わー!出窓がパリっぽい!」「繭子さん、たまに可愛いこと言うよね」「えー、いっつも可愛いもーん」とか言ってたら、何だかつきあってるみたいな気分になっちゃって、これって二人で暮らす物件探してるんだっけ?あれ?それってもう結婚した方が早いんじゃね?と、どんどんと妄想は膨らむばかり。しかし彼はそれを察したのか、部屋が決まると業務的に手数料の振込の説明をして「お役にたてて良かったです」とあっさりと去っていきました。部屋が決まってからは、もう怒涛の日々。初めての一人暮らしということで夢と期待に胸が膨らむ一方、一緒に暮らしていた母と荷物を分けていく作業がとてもつらかったです。「これ、どうする?」「私、いらない」「ママもいらない」「じゃあ捨てよう」とハイパーローテンションで作業を進めていきましたが、離婚する時ってこんな感じなのかなあとぼんやり考えました。

 その時の部屋の決め手は何だったんだろう?と今、改めて部屋を見回してもよくわかりません。ごくごく普通の1Kのマンション。良いところは天井が高いから窮屈に感じないぐらいかなあ。それでもこの部屋に決めたのは、他に内見した部屋が酷すぎたというのがあります。ぼろぼろの石段を20段ほど上がってやっと辿り着く鬱蒼とした木々の中に立つおんぼろアパートとか、コンセントが部屋の端っこに一箇所しかない使いづらい部屋とか、『冷蔵庫備えつけ!』と謳っている冷蔵庫が電子レンジぐらいの大きさだったりとか、電車が通るたびに地震のように揺れるアパートとか、22時以降入浴禁止の女子限定アパートとか。確かこんなのばかりが続いて、家賃条件を1万円上げたと記憶。その時は1万円上げただけで、こんなに違うのかと驚きました。ただ、イケメン俳優くんに「もう1万円あげると、また全然変わってくるよ」と言われ時は「そりゃそうだろ」と冷静に返しました。それをやっていたらキリがないからねえ。私の知人で収入に見合わない家賃の家に住んでいる男がいます。たぶん月収の半分以上は家賃なんじゃないかな。何しろフリーターだから。一人で都心の2LDKに住んでいて、そのうちの一部屋はまるまるクローゼット。それでも足りないらしい。おシャレのために生きている彼なので、それ以外の支出に関しては異常なまでにケチ。しかし私が「××くんって絶対に結婚できないと思うよ」と言うと、イラっとした顔で「西山さんもね」と言われてしまいました。けっ。
 
 今回、引っ越しを考えている理由として、生活スタイルががらりと変わったことがあります。ここでも書きましたが、昨年夏から知人の会社で週5日働き始めました。ちなみに今週は3日間ドラマの撮影が入っているので、会社に行くのは2日のみ。こんな私を雇ってくれている社長には本当に感謝なのであります。とはいえ仕事ですから、当たり前ですが結構大変で帰宅はいつも20時を過ぎてしまいます。「それ、普通だから」と言われそうですが、これまで18時に夕飯をとっていた私としては、ものすごく遅い。この時間から食事を作って、お風呂に入って、原稿を書いて、時には台本を覚えて、となると私にとってはけっこうきついです。これまでの生活がナマケモノレベルだったから。なので、このがらりと変わった生活スタイルを今よりも快適にするための引っ越しなのであります。まずは駅に近いこと。これまでは外出なんてせいぜい週1、2回だったし、仕事の時はマネージャーが迎えに来てくれるので多少遠くても気になりませんでしたが、しかし週5出勤となると話は別。できれば徒歩10分以内が良いですね。そして2番目の条件は、会社帰りに『スーパーオオゼキ』に寄れること。これで、ほぼ立地がしぼられました。毎日、仕事で疲弊してしまうから食生活だけは充実させたい。便利ではありますが『まいばすけっと』では私の欲望は叶えられないのです。今のマンションの契約終了日まで、まだまだ時間はありますが、女子力が上がりそうな日当たりの良い物件が見つかるといいなあ。ちなみに今、住んでいる家はこんな感じです。

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西山繭子さんINFORMATION

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website