まーたんママ│西山繭子の「女子力って何ですか?」

西山繭子の「女子力って何ですか?」

Writer

西山繭子

#082

まーたんママ

2017-09-11 12:29:00

 あっという間に9月!「あ~あ、夏らしいこと何もしてないな~」と丸の内の素敵OLのようにつぶやいてはみますが、そもそも夏らしいことって基本的に苦手です。海は混んでるし汚いし日焼けするし、花火大会も混んでるしよく見えないし治安悪いし、ビアガーデンも混んでるし蚊がいるし食べ物まずいし。とどのつまり、夏らしいことを楽しめるのは若いうちだけってことなのでしょう。ナイトプールとか行ってインスタにでもアップしてればいいさ!けっ!そもそも私と同世代の女性の多くは、子どもが夏休みで毎日家にいるという地獄を味わっていたのだと思います。「えー、今日のお昼もソーメン?」的な夏。世の中のお母さま方、おつかれさまでした。3人の男の子を持つ私の姉も、仕事をしながらの育児に髪の毛をふり乱しております。そんな姉が少しでも休めるように、先日3人の甥っ子を連れて映画『怪盗グルーのミニオン大脱走』を観に行ってきました。これまでも甥っ子を連れて映画に行ったことはありましたが、連れて行ったのは長男と次男のみ。今回もその予定だったのですが「R太、K太、来週まーたんが『ミニオンズ』連れて行ってくれるって」という姉の呼びかけに「わーい!やったー!」と即答したのは誘われていない三男のS太でありました。三男は3歳の年少さんですが3月生まれなので、ほぼほぼ赤ちゃんです。一抹の不安を感じつつも、今さら「S太はお留守番だよ」とも言えず仕方なく三男も連れて行くことに。「まあ大丈夫でしょ」と言う私に、義兄は「繭ちゃん、チャレンジャーだね」とぽつり。姉も「いやー、無理だと思うよ」と言っていました。何でも数か月前に姉が次男と三男を連れて『SING』を観に行った時、三男はまだ映画が終わる前に「映画、おしまい。Sちゃん、帰ります」と言い出したらしい。およよ。

 当日、彼らを迎えに行くと次男、三男はお揃いのポロシャツを着ているところ長男だけがTシャツ。「あれ? ママがみんなお揃いの買ってくれたんじゃないの?」と私が尋ねると「お揃いとか、まじ無理だから」と9歳の長男はぼそりと思春期的発言。まーたん叔母さん、軽くショック。確かに今年運動会に行った時も、私が「R太~」と大きな声で手をふったらガン無視されました。しかし甥っ子にはガン無視されるのに、甥っ子の友達のO田くんに「あ、まーたんじゃん」と声をかけられるという怪。ちなみに長男のR太は数年前、担任だった26歳の先生に「Y先生、まーたんと結婚すればいいのに」と提案したそうです。その時、甥っ子がY先生にした『まーたん』の説明は「ママの1コ下で、面白い」ということ。つまりY先生が得た『まーたん』の情報は「面白いおばさん」ということになります。そんなY先生も別の小学校に移動になってしまい、まーたんの婚期はますます遠のくばかり。まあ移動してなくても無理だったろうけどさ。そんな独身おばさんのまーたんは三匹のチンパンジーを連れていざ映画館へ。当然、世間から見れば年齢的にも私は母親だと思われます。映画館に向かう電車内でも、おばあさんに「男の子3人で、お母さん大変ねえ」と声をかけられました。「いえ、叔母です」と言うのもなんだかなってことで、「ええ」と相槌をうっていたのですが、次男が「この人、ママじゃないよ」と言い、続いて長男が「ママの妹だよ」と言い、三男が「まーたんだよ」とトリプルで全否定。子どもって正直ですね。映画館ではポップコーンとジュースを買いました。いつもは家でジュースなんて飲ませてもらえない彼らは大喜び。叔母さんは甘やかして点数を稼ぎます。ここでも何度も言及していますが、このまま順当にいくと長男は私の喪主になるので、いい葬式のためにも今が大切な時なのです。今流行りの終活のひとつであります。映画が始まる前は三男が最後まで観られるか心配でしたが、さすがミニオンズ、みんな最後まで目をきらきらさせながらスクリーンを見上げておりました。こうして彼らと過ごしていると、母性という女子力がみるみるアップする気がしていましたが、帰りの電車内で私の顔をじっと見た長男に「まーたん、ひげ生えてる」と鼻の下のうぶ毛を指摘されがっくりなのでありました。

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西山繭子さんINFORMATION

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website