春よ、来い│西山繭子の「女子力って何ですか?」

西山繭子の「女子力って何ですか?」

Writer

西山繭子

#070

春よ、来い

2017-03-13 11:45:00

 前回のコラムでホットヨガ教室に通い始めたことを書きましたが、かれこれ一ヶ月が経ちました。身体の調子はすこぶる良いのですが、苦手な先生が増えて受けたいレッスンがどんどんと減っていく今日この頃です。先日も、とあるスピリチュアル先生がレッスン前に「フロントの方からお伝えするように言われたのですが、レッスンの途中退室やシャワーの場所とりはやめて下さいとのことです」と言いづらそうに口にしました。スタジオにあるシャワーブースの数は限られているので、全てが埋まってしまうと順番待ちをしなくてはいけません。多くの女性はシャンプーにコンディショナーにボディーソープに洗顔フォームに、とシャワーに要する時間がとても長いです。なのでいち早くシャワーブースを確保するために、レッスンが終わりそうな頃にスタジオを出て行ってしまったり、シャワーブースに事前に荷物をおいていたりする人が出てくるのです。スピリチュアル先生は「ヨガをする方にそんな方はいないと私は信じているんですけど」と悲しそうな顔をしました。いやいや、先生、ヨガってそんなんじゃないから。ホットヨガの創始者といわれる人なんてセクハラで9億円の賠償命令されているし。ヨガをやっていても悪い人は悪い人です。そんなシャワー取り合戦がまきおこっている殺伐とした空気が流れる更衣室ですが、私にはひそかな楽しみがあります。それは、他の人がどんな下着を身につけているかチラ見することです。もはや女子力関係なしの変態行為!

この連載でも何度か私の下着愛を書いておりますが(第25回『大パンティー祭り』参照)、下着が大好きすぎて他人様の下着にも興味津々。ちょっととんがったタイプの若い子がファンシーな綿の下着をつけていたりすると心が温まるし、地味なタイプのおばさまがゴージャスな下着をつけているとやり手!と思ったりします。また、ブラジャーとおパンツ上下揃っている子を見て「彼氏いるんだろうな。でもさ、きっと彼氏も若いからあっという間に脱がせちゃって下着なんて見てないよ。いや、若くなくても男は下着なんて見ちゃいないよ」とよけいなことまで考えたりします。一方、変態おばさんの私はというと、あいもかわらずワコールなのでありますが、ここ最近はオーダーメイドで作ったブラジャーがすこぶるお気に入り。そう、今年の福袋(第66回『ハッピーニューパンツ』参照)でGETしたお仕立券で作ったデューブルベのブラジャー!今まで色んなブラジャーをつけてきましたが、やはりオーダーメイドはまったく違うのです。もうね、おっぱいがすっぽりおさまるんですよ。今まで夜景が綺麗なタワーマンションとかお洒落タウンのコーポラティブハウスに住んでみたけど、いまいちしっくりこなかったおっぱいが「やだ!私の家、ここだったんじゃん!?」と日本家屋で番茶をすすっている感じです(全然伝わらない)。この完璧なフィット感を作るためには、細かな採寸とカウンセリングが必要となります。普通、既成のブラジャーのアンダーサイズというのは5cm刻みです。アンダーサイズというのはおっばいの下の銅まわりのことですね。私はいつも70cmだとゆるいけど、65cmだときついからってことで楽チンな70cmを選んでいたのですが、ここではジャストサイズの66cmで作ってくれるのです。たかだ1cm、されど1cm。それからおっぱいの下の半円のサイズを測って、カップボリュームを測って、といった具合。デューブルベ独自のこの採寸方法だと、組み合わせによって全部で3030通りのサイズがあるそうです。街で自分とまったく同じサイズの人と出会ったらどうしよう。ドッペルゲンガーならぬオッペルゲンガー的なさあ。まあとりあえず吞みにいくよね。で、膝と膝ではなく、おっぱいとおっぱいを突き合せて語っちゃうよね。てか、ブラジャーをオーダーメイドで作るという女子力が高い話を書いているはずなのに、どうしてこうなってしまうのだろう。気をとりなおして話を進めます。サイズが決まったら、形、柄、色などを選んでオーダー終了。私は初めてだったので一番使いやすいベージュのシンプルなものにしました。この色の下着は、男性からすると「おばさんくさい」と不評らしいですね。でも私はすでにおばさんなので気にしません。それにさっきも書いたけど、お前らいちいち下着なんてチェックしてないだろうが!そして3週間ほど経ち、私のためのブラジャーが完成したのであります。お店で試着した時、フィット感もさることながら、そのシルエットの良さに感動!おっぱいの位置が高い!今まで6階の婦人服売り場でブラックフォーマルウェアを探していたおっぱいが、11階のレストラン街で和風ハンバーグを食べているみたいな感じです(やっぱり全然伝わらない)。あまりにも素晴らしかったので、その場で春らしい花の刺繍が入ったブラジャーもオーダー。東京に春がやってくる頃、私のおっぱいにも春がやってきます。ホー、ホケキョ!

image2

最近のコラム

西山繭子さんINFORMATION

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website