アンスピリチュアル│西山繭子の「女子力って何ですか?」

西山繭子の「女子力って何ですか?」

Writer

西山繭子

#069

アンスピリチュアル

2017-02-27 11:11:00

 春一番だか二番だかが吹き荒れる東京の街をせっせと自転車で進む私。風にあおられそうになるたびに「今の私の非力感、すごく女子っぽい。守ってあげたい指数マックス」と思い、私を見つめているマッチョがいないか見渡しましたが、そこには強風にしかめっ面をしている人々しかいませんでした。春一番だか二番だか三番だかが吹いたのだから、もう春は目前と言いたいところですが、まだまだ寒い!寒い、寒い!サムイ島!こう寒いと、どうしても身体が縮こまってしまい、肩や背中がガチガチに凝ってしまいます。今はコンクールや発表会がない時期なのでバレエも週1回しか通っていません。週1回だと身体は完全に硬くなってしまいます。しかし柔らかくしようと無理をすると冬は特に筋がピッキーンといきやすいんですよね。別に無理をしなきゃいいじゃないかと言われたらそれまでですが、私は7月末にあるバレエのコンクールをすでに視野に入れているので、本格的な練習が始まる前に身体を整えておきたいのです。(西山繭子がどこにいきたいのか、もはや謎)さてどうしたものかと思っていたら、近所に新しいホットヨガスタジオがオープンしたとのこと。しかもただいまキャンペーン中!入会金無料はもちろんのこと、月会費が最初の二ヶ月半額!ああ、これで良いじゃないかと寒風吹き荒れる中、早速スタジオへと自転車を飛ばしたのでありました。

 ホットヨガとは何ぞやという男性陣のために説明しますと、ホットヨガというのは温度と湿度をあげたサウナのような室内でヨガをするというものです。普段汗をかく機会がない人もホットヨガでは簡単に汗だくになれるってわけです。女性にとっては定番となったエクササイズなので大きな駅のまわりには必ずといっていいほどスタジオがあるはずです。かくゆう私も10年ほど前に通っていたことがありました。しばらく続けていたのですが、レッスン中にヨガの先生が精神的なことを求めてくることに辟易してやめてしまいました。もちろんしっかりした先生もいました。しかし「ん?これで先生?」という人がいたのも事実。たかが数ヵ月の講習でヨガ講師の資格をとった人に「内面から綺麗になりましょう」とか言われも「は?」って感じなんですよ。ヨガというと確かにスピリチュアルなものという雰囲気がありますが、私はホットヨガにそんなものを求めちゃいないのです。しかし通い始めた今回のスタジオにもスピリチュアル先生が何人かおりまして「今は新月です。月のパワーを使ってヨガをすることで女性性を高めていきましょう」とか「ゆっくり呼吸をすることで昨日の自分よりももっと前に進みましょう」とか、やっかいなことを言い出し始めるのです。一人の先生なんて「ヨガをしている時、自分の身体から魂が抜けて、その魂がスタジオの片隅から自分の姿を見ているのがベストです」と言っていたんですけど、先生それ、完全に死んじゃってますから。もうお願いだから、もっと暢気にやらせてちょうだい!私がそんな風に思うのは、実際にヨガの本場であるインドでヨガをしたことがあるからかもしれません。私がヨガをしたリシュケシュという街は、かの有名なビートルズも訪れたという修行の地。仕事で寄ったこの街で「せっかくだからヨガでもしてみますか」ってことで、朝早くにアシュラム(ヨガ道場)を訪れました。私のイメージでは仙人みたいなおじいさんがいるのかなと思っていたのですが、そこには普段着のおじさんとおばさんの姿が。まずは先生に促がされ、仰向けに寝転がって目を閉じました。「ゆっくり呼吸をして」という先生の指示に従っていると、わりかし早い段階でどこからか鼾が聞こえてきました。寝るの早くね?と思っていると、私の横に一人のおじさんが遅れてやって来ました。おじさんはどさりと寝転がると、その瞬間「ブッ!」という爆音のおならをしました。驚いた私が目を開けておじさんを見ると、おじさんはちらりと私に目を向け少し迷惑そうな顔をして、まるで私がおならをしたみたいな空気を作りました。なんなの、このアシュラム。その後、色々とポーズをとっていったのですが身体が柔らかい私は先生よりも上手という事態に陥ってしまい、なぜか途中からみんなの前でお手本をするハメに。なんなの、このアシュラム。終わってから先生に話を伺うと「もちろん本格的な修行をしている人もいるけれど、多くのインド人は気楽にやっていますよ。健康のために」とのこと。この経験以降、私はヨガに対してスピリチュアルなものを求めなくなりました。もっと気楽に、もっと暢気に、がモットーです。とはいえ、ホットヨガに通っているというと、女子力は高そうでいい感じ。スタジオ内もお洒落なヨガウェアに身をつつんだ女子たちがたくさんがいます。そんな中、私も一見『リボン柄』という女子力高めのレギンスをはいているのですが、よく見るとこれは『リボン柄』ではなく『パスタ柄』なのです。女子力云々以前に、こんな『パスタ柄』が世の中に存在していることが驚きです。

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西山繭子さんINFORMATION

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website