アメリカンドリーム│西山繭子の「女子力って何ですか?」

西山繭子の「女子力って何ですか?」

Writer

西山繭子

#049

アメリカンドリーム

2016-04-21 17:45:00

 みなさま、こんにちは!ただいまNYに来ております。こちらは青森と同じぐらいの緯度なので、東京よりも涼しいはずなのですが、ここ数日は半袖でもOKな日々です。出発前に服装の参考にとNYからのニュース中継を見たところ、記者の後ろを行き交うニューヨーカー、ダウンコートはいるわ、タンクトップはいるわでまったく参考になりませんでした。欧米人の皮膚感覚って本当に不思議。NYでは日本でも話題の大統領選挙の予備選真っただ中。昨日もニュージャージーのバス停でバスを待っていたところ、隣にいたおじさんが熱烈な共和党支持者で、私が百万回、観光客だから選挙権ないよと言っても、滔々とアメリカの未来について語っておりました。私のリュックにはタイムズスクエアのお土産屋で買った『F××K TRUMP!』のTシャツが入っていたので、話を聞きながらドキドキしていました。ちなみに私は民主党支持者でも共和党支持者でもなく、まーたん党です。(まーたんは甥っ子からの呼び名)まーたんのまーたんによるまーたんのためのまーたん。もはや、どういうことだかわかりません。こちらの連載で公約していた「女子力向上」もまったく守れていないまーたん党ではありますが、善処してはいるのです。ここNYでもきちんとやっております!さっきも女子力がそのままデパートになったような、女子力の聖地『ヘンリ・ベンデル』に足を運んできました。もう全てが可愛くて、私の中にある女子力がむくむくとウェイク・アップ!さすがNYだぜ!

 NYは今回で三度目です。初めて来たのはかれこれ15年前。空港からタクシーで宿泊先のホテルまでやって来た私。チェックインをしようとしたら「オーマイガッ!財布がない!」フロントであたふたしていると、先ほど乗ったタクシーの運転手さんが「ちみちみ、財布忘れてるよー」と届けてくれました。フロントのお姉さんは目を丸くして「あなた、すんごくラッキーよ。普通はありえない」と言っていました。こんな風にNYとの最初の出逢いはとても恵まれたものでした。クリスマス前のNYは映画で見た世界そのままで、街を歩いているだけで幸せで、毎晩のように友だち(NYで美術学校に通っていた)と飲みに行っては酩酊。はたまたその友だちのクラスメイトであるハンサムなスイス人とデートをしたり、10日間ばかしの滞在は何とも有意義なものでした。それからあれよあれよと月日が経ち、次に訪れたのは12年後のことでした。今回は忘れないぞと、財布を握りしめた私にタクシーの運転手さんが「NYは初めてかい?」と訊いてきました。私は12年ぶりと伝えたいところ「トゥエンティーン イヤーズ」と痛恨のミス。本来はトゥエルブなのだけど、シックスティーン、セブンティンーンと同じ感じで「トゥエンティーン」と言ってしまいました。もちろん運転手さんは「トゥエンティ20」だと思い、「じゃあ子どもの時だね。家族旅行だったの?」「えー、大人だったよ。一人で来たもん」「ワッツ!?(この女、いくつだよ)」と会話が噛みあいませんでした。そんな前途多難なNY旅行ではありましたが、この時は二大ミッションを抱えての旅行でした。一つ目は父から託されたプレゼントを松井秀喜さんに渡すこと、そして二つ目はニューキッズオンザブロックのコンサート。松井さんはあまりにも良い人すぎて、途中から神様と話しているのかと錯覚したほどです。ヤンキースタジアムで行った彼の引退セレモニーにも招待いただいたのですが、当日の朝、わざわざ電話をくださり「××ゲートにプレイヤーという窓口がありますんで、そこで僕の名前を言って下さい」とご本人にとって大切な日にもかかわらず、私などに素晴らしき気配り!私は窓口で誇らしげに「マツーイ!マツーイ!」と言ってチケットを受け取りました。私の後ろにはモデル級の超絶美女が並んでいたのですが、彼女は窓口で「ジーター!」と言ってました。心の中で「アメリカンドリーム!」と叫んだ瞬間。もう一つのミッション、ニューキッズのコンサートに関しては長くなってしまうので、そのうち全10回にわたってお届けしますね。そして今回、三度目のNY!空港から市内までは、タクシーではなくエアトレインと地下鉄を乗り継いでみました。超大変。もう二度と使わない。重たいスーツケースを抱えて階段を昇り降り。腕がぱんぱんになりました。しかし、せっかくのNY!荷物を宿に置いた私は、クラムチャウダーを求めオイスターバーへ。メニューにはニューイングランドとマンハッタンという2種類のクラムチャウダーがありました。私はオーソドックスな白いクラムチャウダーを食べたかったのですが、どちらかわからなかったので、ここはマンハッタンだしってことで後者を注文。目の前に皿を置かれてびっくり。赤い。魚介の入ったミネストローネでした。出だしが最悪な今回のNY。しかも街のスピードに全然ついていけず、己の老いを感じています。あと6日間ほどの滞在、これまでを上回るハッピーが起こると良いなあ。乗ったバスの運転手がキアヌ・リーブスとかさ。

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西山繭子さんINFORMATION

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』などがある。

 
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