河童にモテる│西山繭子の「女子力って何ですか?」

西山繭子の「女子力って何ですか?」

Writer

西山繭子

#006

河童にモテる

2014-07-14 08:18:00

 ここ最近、3週間で400枚という原稿に追われ、心身共にボロ雑巾の西山です。かなり常軌を逸した〆切なのですが、引き受けたからには負けないぞ!というか、気が小さいので〆切をやぶるなんて絶対にできない。何とか踏ん張っております。しかしこの過酷な状況は、創作で頭をひねることとは別に、長時間執筆をすることで生じる身体の痛みとの闘いにもなっています。腱鞘炎にならぬように、まずはリストレストを買いました。そして、手首だけではなく、どうしても腕全体が疲れてくるので、デスクに取り付けるタイプの肘置きも購入。これが快適なのでありますが、U字型をしていて、何だかデスクに便座がついているみたいです。もうこの際、椅子も便座にしちゃうか。わざわざトイレに行かなくて済むから時間短縮ですね。とまあ、こんなアイディアが浮かんじゃうほど、疲労困憊なのであります。決して夜型ではないのですが、いかんせん昼間書いているだけでは間に合わず、執筆は雀がチュンチュン鳴いちゃう朝までかかってしまいます。その間に、もちろん小腹も減るわけですよ。最初は、欲望のままに夜中にカップラーメンなどを食べていたのですが、先日久々に足を通したパンツがすごくきつかったのです。梅雨時だから、湿気で縮んだのだろうなと思います。まったく、梅雨ってやつは!しかし、確かに欲望のままに食べ続けていたら、脱稿する頃にはマユコ・デラックスになってしまいます。気をつけねば。というわけで、今回は女子の永遠のテーマ、ダイエットについて考えます。

 今だと『水着の季節到来!今こそダイエット!』という見出しが女性誌に躍っていますが、これが『食欲の秋!だからこそダイエット!』になり『正月太りにさようなら!つまりダイエット!』になります。結局、年がら年中ダイエットなわけです。女子力の高い子は、チョコレートパフェを前に「太っちゃう~。でも今日だけはいっか!」と困ったように笑います。そして「お前、クリームついてるよ」「え?やだ!」と口の端についたホイップクリームをぺろりと舐めてモテまくるわけですが、さらに女子力が高い子ともなると『ヘルシーだけど美味しい』に食いつくのです。私の持論では、世の中にヘルシーで美味しいものなど存在しません。カロリーと美味しさは確実に比例します。油ぎっとぎとのハンバーグにとろりチーズをのっけて、横にはエビフライ。皿の上は夢の世界、高カロリーアイランドであります。私はこういうものが大好物なのです。

摂取カロリーが消費カロリーを超えたら太るという単純なメカニズムなのに、あとからあとから出版されるダイエット本にも辟易しております。『××するだけで痩せる』といったうたい文句が本屋さんで平積みされており、しかもそれが飛ぶように売れる。本当に世の中、怠けて痩せたい人だらけ。でもグルメ本も売れる。もう人間は煩悩のかたまりなのでありますな。かく言う私も美味しいものは大好きです。世の中にはどんなに食べても太らないという人間もいます。焼肉大好きアピールのデルモとかね。私もそう信じ生きてきましたが、三十路を過ぎたあたりから「おや?」と腰回りが気になり始めました。以前、劇団キャラメルボックスさんの舞台で客演をさせていただきました。素晴らしき劇団、キャラメルボックス、何と毎日公演前にお弁当が出ていました。昼夜公演の時はもちろん2回。何種類かあるお弁当の中で、私が選ぶのは決まって一番高カロリー。それを毎日ぺろりと完食。このぺろりは、ホイップクリームのぺろりと違ってまったくモテ要素がありません。「まあ、舞台で動くし体力つけないとね」と自分に言い聞かせていたのですが、この舞台で私に激しいアクションなどは一切課せられていませんでした。おしとやかな心優しい女性の役で、ソファーに座ってはうふふ、ゆっくり歩いてはくすり。舞台上でカロリーを消費しようがなかったのです。公演は一ヶ月を超える長丁場。もうね、初日と千秋楽でキャストが変わったのかと思うほどにパンパンに太りましたよ。後半はスカートのホックが締まりませんでしたから。見かねた旦那役の上川隆也さんが、私にアンクルリストウェイトをプレゼントしてくださいました。(下の写真のものです)あまりにも嬉しかったので、私はそれを楽屋の鏡前に大切に飾っておきました。使えや。千秋楽を終えたあと、どうやって痩せたのかといえば、ひたすら歩きました。ウォーキングとかじゃなくて、遊びに行った帰りに3時間かけて歩いて帰るとか。ちなみに走るのは苦手です。以前、ランニングに挑戦した時、ノープランで遠くまで行ってしまい、タクシーで帰ったことがあります。

女子力が高ければ高いほど、美に対する意識も高くなるから、こりゃ大変だ。と、これを書いている最中にも小腹が減ってしまった私。冷蔵庫を開けてどうしたものかと悩んだあげく、私が口にしたのは、きゅうりでした。きゅうりを1本かじりながら原稿を書く。お菓子などではなく、きゅうりにしたというこの意識の高さ。まさに女子力のあらわれですな!河童にもモテること間違いなし!

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西山繭子さんINFORMATION

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website